今週のお題「最近読んでるもの」
友達に勧められて、もうすぐ読み終える本がこちら。
苦手なジャンル「現代小説」
現代小説を読んでいると、一元的な価値観を押し付けてくる描写があったりして、読んでいても気持ちが乗らず何度か挫折してしまったことがある。
「就活は嘘の付き合いだ」とか「派遣労働者は負け組だ」みたいな考えを持つ登場人物が出ると残念な気持ちになる。
自分とは違う世界にいる人の経験を味わうために本を読んでるのに、自分と重ね合わせること自体ナンセンスなのかもしれないけど。
まあいいや
早速、レビューしてきます。
私の強度な色眼鏡は許してください。
愛すべかない主人公 水越愛
26歳の派遣OL。
ある時、派遣として勤めてた会社にクビを切られたのをきっかけに、おかしなプライドと拘りを持ち続けることで、その日暮らしのホームレス生活がスタート(いわゆるトー横界隈?に進出)。
自分が大学を出ているのに派遣社員でいることが許せない、
馬鹿にされたくないし、人に頼るのが許せない、
謎にプライドが高く、他人に対して職業で優劣をつける癖がある、、
めっちゃ嫌な奴なんだけど、
そんなプライド高いのに何故か家を捨ててホームレスになった勢いだけは好き。
しかも、鬱病とかメンヘラにならずにホームレス生活半年くらい続けられてるからめっちゃタフ。
嫌な奴の周りも嫌な奴
人の職業や持ち物で優劣をつけるような、嫌な奴 愛ちゃんの周りもロクなのがいない。
就活では、唯一採用してくれた企業の人事にセクハラ発言をかまされる。
ネカフェ生活中も、めちゃくちゃ体は売らないように用心深くしてたのに、出会い喫茶で出会った好みの男に裏切られてレイプされる。
そんなのばかりに出会うから、拗らせが加速
おかしなプライドと拘りの正体
水越愛は、幼少期のほとんどを母親と過ごした。父親は離婚していなかったが、不倫をしていてほとんど家に帰ってこない。
母が病気で亡くなると、父が不倫相手と再婚して子供を作って帰ってきた。家には居場所はなく、父親は他人のような存在で、弟と自分に対する愛情の差に苦しむ日々を過ごす、、
いわゆるアダルトチルドレンでいう、ロストワン(いない子)状態。
ロストワンは、家族との衝突を回避するために
目立たず、自我を抑圧し、周囲の意見を優先。
人への甘え方が分からず、自立心が強い。
愛の場合、自立心の強さが裏目に出たこと、
そして、自我が育ちきらなかったため他人からでも分かるような尺度(若さや学歴、職業)でしか自分の価値を感じられなかったこと、
それらが彼女を不幸のループに閉じ込めてしまったことが想像できる。
就活のセクハラ人事も彼女が自分で引き寄せたのではないか。自分のスキルや能力に適わないような企業ばかり受けていたから、余裕のなさも伝わって足元を見られた。
レイプ男も、愛ちゃんはワリキリ(売春)しないのに「神様(パパとか、パトロンとか、シュガーダディの最上級的な存在)」を期待しちゃったのが甘かったんじゃないか。中途半端な気持ちでいたから相手を怒らせた訳だし、茶飯(ご飯一緒に食べるだけでお金をもらうこと)だけ姑息に続けた当然の結果な気がする。
それに、愛のことを1番に心配してくれる幼馴染の雨宮くんの連絡を完全無視。
自分を正しい方に導いてくれる人を遠ざけて、
そうじゃない人を吸い寄せるから、そりゃ幸せになれないよ。
シンデレラストーリーではありませんように
幼馴染の雨宮くんと再開できた愛ちゃんは、どうなるの?あしながおじさん的なオチだったら胸糞。
ホームレス経験を通して、自分の卑劣さを自覚した愛ちゃんよ。
トー横界隈の迷える子羊たちの救世主になり得るのか。
それとも、ホームレス生活で出会った女の子達が言うように、「戻れる人」として元の生活に戻って終わりなのか。
読了しました
最後はだらだら思いつくままの感想
引用:
貧困というのは、お金がないことではない。頼れる人がいないことだ。
そして、頼ることができない自分がいることだ
頼ることができない自分というのは、
自分でそうしたくてそうなったんじゃない。
気付いたらそうなっていた。
十分な愛を与えられなかった子どもたちは、
大人になりきれず不器用に生きていく。
不器用なりに必死に生きて、誰かと結ばれて子どもを産む。
その子どもはまた十分な愛情をもらえないまま育っていくことになる。
除け者にされたり、マルチや新興宗教にハマったり、犯罪を犯したりする。
自分がそうならなかったのは、ただ生まれた場所が違かったからなだけな話。
運が良かっただけなのに、なんで他人事だと思える人の方が多いんだろう。(主人公愛も最初は他人事だと思っていた)
愛は元の生活に戻れたけど、その世界でしかやっていけない人たちがたくさんいる。
現実世界にも当たり前にいて、Xで「神待ち」と検索すればすぐに生身の未成年が助けを求める声が今でも聞こえてくる。
その人達を救ってやることができないけど、
私達一人一人が、そういう人たちがいることを理解し、想像してみる余地があれば、
少しずつ社会や世界は変わっていくだろう。
税金は何に使われるべきか、
偏見が知らず知らずに彼らを社会の外に追いやっていないか、
自分自身を苦しめてないか
昔に比べて生きやすくなった世の中だからこそ、そういう希望を捨てたくない。
こういう社会問題を題材にした本の感想を書くと、
「で?あなたには何ができますか」って責められているような気がして、綺麗ごとみたいな結論になっちゃうのもいやだな。
苦手なりに最後まで読めたのも、めちゃくちゃ読みやすい文体のおかげ。
それに、主人公と自分が同じ年齢で、就活に苦戦していた自分もいて状況も重なることがあった。
同じような事象に出くわして(インプット)、何を感じどう行動するか(アウトプット)ってこれまでの経験次第なのだろう。